• テキストサイズ

ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第81章 月を見上げて






全畳張りの床に柄障子の施された窓久々に感じる和の空間は懐かしいながら胸弾ませるものだった



「和室やぁ………日本ですね!………わぁ…………」



なんて早々にリュックを下ろした私は室内を見て回る

二人に対しては広い和室だが部屋は此処とお手洗い、洗面、浴室くらいの物と至ってシンプルなのも旅館の様な雰囲気だ

しかし玄関扉と部屋を隔てる細部迄凝った立派な欄間や金箔の美しい屏風、壁に掛けられた大層な掛軸や大きな青いツボ等の装飾は歴史的価値を感じさせ旅館よりも寺を思わせる物だった


部屋の中央には立派な木製の炬燵机、その上には急須と湯飲みが用意されていて正に和の雰囲気に気分はうなぎ登りだ



「コートいつまで着てるつもり?」


なんて言いながら既に座椅子に腰掛けて湯飲みにお茶を注ぐ彼に笑顔を向ける


「凄いですね!ジャポンって日本にそっくりです!」


「そうだね。食べ物も似た物が多いし明日の昼は寿司でも食べに行こうか。」


「はい!!!」


彼からの素敵なお誘いに胸弾ませながら隣の座椅子に腰掛け炬燵に足を入れて幸福のため息が漏れ出た


寒暖差少ないパドキアよりも随分と寒い気温に冷えた身体が温かく包まれる



「……………こたつ………最高…………」



自然と出た言葉に彼はチラリと視線を向けると


「懐かしいね、コタツ。確か沙夜子の実家にあったよね。初めは何か解らなかったけど布を被せて保温性も確保するなんて良く考えられてるよ。」


彼は湯気の上がる湯飲みを差し出しながら炬燵を誉めた



……………確か彼が初めて炬燵に入ったのは彼が来て数日しか経っていないお正月の日で、それ以降彼が炬燵に入る機会は無かった


大袈裟かもしれないがもう二度と彼と炬燵で寛ぐなんて事は無いのだと思っていた私にとって些細ながら感慨深い



私達は暫く無言のまま湯飲みを傾け静かな時間に浸っていた



/ 1349ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp