ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第81章 月を見上げて
11月15日
私達はジャポンのとある寺院の宿坊にて寛いでいた
宿坊とは一体何なのか……日本にも似た宿泊施設があると話した彼は
「宿坊って言うのは寺院や神社に昔から存在して本来は参拝客や修行僧が宿泊する施設なんだけど現代では観光客向けの所が多い、現に今いる此処は観光客向けの施設だよ」
無知な私に単調な声色で説明をしてくれた
敷地中央に鎮座する本堂は和様建築の立派な物で細い柱に美しい縁側の外観は私の世界に既存する有名な寺や神社と本当に類似していて
ぐるりと敷地を囲む塀の中の風景は本当に日本と見間違う程だ
ジャポンの街並みも日本とそっくりで元の世界に帰った様な錯覚すら覚える中到着した寺院は広すぎない敷地の中に三重塔等を誂えた壮観ながら不思議と落ち着く場所だった
そんな中、私達が通された宿坊は本堂の裏手にひっそりと、しかし重厚に佇んでいた
長い木目の廊下は歴史を思わせる赴きながら綺麗に磨きあげられておりパドキアよりも随分と冷え込む冷たい風が足元を擽る
どうやらジャポンはパドキアよりも四季がはっきりしているらしく
異世界に来てから初めての冬らしい寒さに自身の肩を抱き擦りながらも視線はキョロキョロと落ち着かないでいた
本堂の裏手という立地からか其れとも厳粛な寺院の一角に建っているからか随分と静かで縁側から眺める景色は枯山水の美しい砂利石の庭だ
いつか見た有馬の宿とも違った奥ゆかしさに視線を走らせていると
宿坊の従業員である和服の女性は最奥の部屋の前で深々と頭を下げた
「松の間で御座います。夕食は本堂にて18時からになります、また消灯は21時ですので外出の際はご注意ください。失礼致します。」
直立不動の彼とは反して釣られて頭を下げた私にニッコリ笑うと女性は静かに去って行った
松の間……………松竹梅で言う所の松だろうか
今迄の記憶を振り返って彼なら一番良い部屋を取るだろうし……なんて考えながらも開いた扉から見る室内に間抜けな声が漏れた