ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第79章 彼と私の時間
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私達は早めの夕飯を済ませて飛行船に備え付けられた酒を開けていた
テレビも付けず静かな空間で私は物思いに更けていた
外界から隔離された飛行船という空間で世界中に存在するのは私と彼だけなのでは……なんて錯覚をする
何を考えているのか解らない無機質な横顔は先程から何をするでも無く静かにグラスに唇を付けていて
そんな彼を私だけが視界に入れているのだと思えば大好きな彼を独り占めしている気分に成った
こみ上げるのは幸福感と胸を甘く締め付ける高鳴り
今この時が本当に幸せで瞼を閉じて思い出したのは湖畔に寄り添う王子様とお姫様の姿だった
二人は長くお互いを想い合いやっと同じ時を歩み始めた
二人は漸く身も心も満たされているのだろう
……………私があのお姫様で彼があの王子様だったなら
「…………イルミさん」
私の声に彼は視線を向けて言葉の先を待っている
「あのお姫様と王子様……幸せに成って良かったですね………」
心底そう思う
私が彼とバラバラに過ごした月日は私にしてみれば長く辛い日々だった
だけど王子様からしてみればたったの一年半と言って退けられる短さで
お姫様から比べられれば私の悲しみ等お話しにならない深い悲しみだっただろう………
そんな時を越えて二人は笑い合っていた
胸がじんわり温かくて思い出しただけで涙が溢れそうに成る
「私実は………見たんです。帰りに湖畔で微笑み合う二人を!」
「ふーん。」
特段興味が無さそうな彼だが
彼だってお姫様に好かれ、更にはポルターガイスト現象を目の当たりにしている
従って全くの無関係者では無いと思う
「……イルミさんほんまに見えてなかったんですか?」
「………何が」
「お姫様の姿です!」
「……見えてない。」
「でも信じますよね!私の話!!だって家具動く所とか一緒に見ましたもんね!っね!」
「…………。」