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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第15章 アパートを思った一年





気が付けばこの歳まで暗殺に関連する本や知識と成る本以外読んだ記憶が無く、そもそも家に絵本があっても見向きもしなかった

それ以外に読んだのは彼女の家に並んだ何の知識にもならないコミック





しっかりと本を握りしめた弟はまた怖々と自身を見上げる


読書スペースへ手を引いて胡座をかけば弟は戸惑った様に立ち尽くした


「………おいで」


膝を叩けば緊張したようにぎこちなく座った弟

ゾルディックの今後を担う小さな背中

命を落とさない為に必要な事

だけどほんの一時も穏やかな時間を過ごしてはいけないなんて決まりは無かった



森にひとりぼっちだった小鳥に友達が出来る物語は暗殺者には不必要な感情を教えていた



「イルミ兄様………」


「何。」


「友達はぼく達には必要無いんですよね……」


怖々と小さな声は確かめる様に絞り出されて


「すみません!あの……「そうだよ。不必要だ。………だけど」


「…………?」


「絶対に邪魔な訳では無いよ。仕事が殺り辛くなってしまうけど、しっかりとノルマを達成出来るなら問題無い。」


遮った俺の言葉に弟は驚いた顔をした

そして俺自身も自身の発言に驚いていた


そんな事…………あってはならないと思っていた…………



キルアの顔が思い浮かんだ

友達が欲しいのだと言った弟の瞳

今なら真っ直ぐに背中を押せたかもしれない……なんて


「イルミ兄様………また絵本を読んでくれますか……」


「勿論だよ。」


着物の袖をぎゅっと握った弟は自身の声に笑みを溢した


「イルミ兄様………なんだか変わられましたね」


「………そうだね。変かな」


「いえ、素敵です」



「そう……ありがとう」



広い広い書庫の端で交わした会話は暗殺一家にとって似つかわしくない会話だったかもしれない

しかしその場に漂った雰囲気は異世界にひっそりと佇む古びたアパートの一室を思わせたのだった





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