第78章 動き出す時間

「今回の依頼人はこのホテルの支配人だ、よって仕事が終了したのなら速やかに出て行く他無い。沙夜子のやりたい事が何かは知らないけど此所を出た後にしたい。正体を掴まれている以上長居は俺にも沙夜子にもリスクになる。………解ったね？」



彼の言いたい事は理解出来た

確かに彼の言った通り、彼の顔は勿論、職業も知られているなら長居は其れだけ危険に繋がるだろう

其れに彼は私のやりたい事を無下にする様な言い方をしなかった

其れに付き合うのは構わないが今は此所を離れるという事だ


正直気が急いて仕方がないが彼の判断は正しく私は大人しく彼に従う事にした


………私達に何かあれば其れこそ王子様の託してくれた全てが水の泡に成る………


優雅にカップを傾けながらじっと様子を伺う彼に頷けば彼は荷物を纏める様に言った


私が荷物を纏めながらも話した王子様とお姫様の悲劇に彼は微塵の興味も示さなかったが特段否定的な姿勢も見えなかった

…………時間は掛かるかも知れないがこの分だと肖像画の捜索には協力的だと思える

実質、肖像画の捜索は彼の協力無しには不可能なのだし

彼に頭から拒否されなかった事に安堵した