ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第77章 悲しみの物語
出来上がった肖像画は随分と小さかったが、彼女は自室の引き出しに仕舞い込めると喜んでいた
「本当に………?小さ過ぎない?」
「いいえ!これなら何処へでも持って行けるでしょう?」
彼女は大きな瞳を目一杯細めて眩しく笑った
肖像画を余程気に入ったのか額に入れられた其れを彼女は良く眺めていた
「私本当に幸せ………」
「君の口癖だね」
「だって本当の事だから」
心底幸せそうに微笑みながら肖像画を胸に抱く彼女を僕はきつく抱き締めた
愛しくて大切な人
僕も本当に幸せだった
これからも彼女と共に穏やかな時を過ごすのだと思っていた
婚儀が3日後に控える晩
僕達は静かな湖畔で花を眺めていた
「私貴方の妻になるのね……」
「不安?」
「いいえ、嬉しいの」
小さく照らすクリスタルローズの光に浮かんだ彼女の穏やかな微笑みを見たのはこの時が最後だった
静かな闇に突然響いた銃声
僕達は直ぐに城の中へと逃げ込んだ
慌ただしく兵士が出払った城に嫌に騒がしい町民の声が響いた
悲鳴と子供の泣き声に交じって沢山の銃声が聞こえる
僕は震え怯える彼女を只抱き締め銃に手を伸ばした
彼女の身を守る為に
「………シュライア様………」
「ルミール、決して僕から離れないで」
「………はい」
小さな手を強く握りながら交わした言葉