ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第77章 悲しみの物語
僕達は空白の時を埋める様に二人で時を過ごした
彼女はやはり聡明で美しい人だった
そして、知れば知る程明るく活発な女性でもあった
「ルミール!!怪我をしたらどうするんだ!」
「平気よ!一度も落ちた事なんて無いもの」
彼女は良く笑う人だった
屈託の無い笑みで僕に笑いかけながら木に登り雛鳥を眺める事も良くあった
僕がその度にどれだけ心配をしているかなんて彼女には関係無くて
僕はハラハラさせられながらもそんな彼女を見ているのが好きだった
公の場では気品溢れる振る舞いを見せる彼女だが僕の前ではありのままの姿を見せてくれる
夕飯前におやつを食べて悪戯に笑ったり
夜の外出は厳禁されているのに彼女に誘われこっそりと抜け出したり
…………話せば山の様にある
彼女はあの湖を気に入っていて良く二人で眺めた
彼女は決まってドレスを捲り上げて水に足を浸けて遊んだ
今とは時代が異なっていて女性が、しかも姫がそんな事をするなんてはしたないと執事は頭を抱えていたが無邪気な笑顔に癒される者も少なく無く
上品さと無垢な振る舞いを合わせ持つ型破りな彼女の魅力に僕は益々惹かれて行った
「ねぇ!私達の絵を描いてもらいましょうよ!」
「絵?………そう言えばまだ二人揃っている物は無いね」
「シュライア様と二人の絵が欲しいわ………私今本当に幸せなの、想い焦がれた貴方とこうして過ごせている事が夢みたい………」
「そうだね、描いて貰おうか」
「………それとね、その絵は私が頂けないかしら……?」
「………ホール階段に飾らないの?」
「飾るのは婚儀の物で良いじゃない……私が持っていたいの」
「わかったよ」
僕達は二人で良く眺める湖畔で絵を描いて貰った
本来ならば正式な王室で正装を身に付けて行われる物だが彼女が個人で所有する物として堅苦しい物にしなかった
僕は普段着ている物のまま、彼女は僕が似合っていると誉めた淡い水色のドレスを嬉しそうに身に付けていた