ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第77章 悲しみの物語
世話係に連れられ自室に向かった僕と彼女は沢山の会話を弾ませた
緊張のあまり声を詰まらせてしまう場面も多々あったが彼女は気に止める素振りも見せずに笑っていた
話せば話す程彼女は聡明なのだと知り
時間はあっという間に過ぎて行った
初めて年頃の近い人物と話したからなのか
それともあんなに綺麗に笑う女の子を初めて見たからなのか
たったの1日時間を共にしただけで別れは随分と辛いものだった
それは彼女も同じだったらしく今にも落ちそうな涙を瞳に浮かばせ馬車に消えて行く姿に胸が痛んだのを覚えている
僕は彼女に恋をした
眩しい黄金色の髪に
鈴の音の様な声に
朗らかな微笑みに
だけど僕は一国の王族で後々は国を担う立場にあり芽生えた気持ちを口に出す事すらも許されなかった
将来は見合いで妻を決めるというのが伝統であり
それを覆す事等出来なかったのだ
彼女がまた城を訪れる事を願いながらも月日は流れる……
募る想いを抱えたまま僕は18の成人に成長した
彼女との再会は叶わぬままに僕の婚約相手を募る空気は国中を包んだ
18に成れば婚約相手を決め、婚儀を国民に披露する事が求められる
理解はしていても心中複雑な気分だった
………婚約してしまえばそれこそ彼女への想いは消さなければならない………
そんな僕の杞憂は関係無く
募った娘の数は1000を越え隣国からも沢山の娘の肖像画が届けられた
どの女性を選んでも血筋や家柄に申し分は無いのだから早く孫の顔を見せて欲しい、と母は喜んだが
僕は一向に決めかねていた
それが僕に出来る精一杯の抵抗だった