ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第76章 彼ともう一人の人物
…………這いずり回られるのは滅茶苦茶怖い
ビジュアルが貞子なのだ怖くない人なんていないと私は思う
しかし突然静かに着席されてもそれはそれで恐ろしい物があった
何も語らず椅子に座った貞子をガン見する
喋れないパターンの霊なのだろうか…………?
まじまじと霊を霊だと認識して対峙するのは初めてだが思い返して見れば女性も声を発していなかった様に思う
そもそも私は見えるだけで会話は成り立たないのかもしれない
その辺から察して欲しい
私はあなたに何も出来ない無力な存在なのだと
……………しかし非常に不味い
貞子は椅子に座ったっきり何もせず、あたかもこの場所気に入ったとばかりに居座っている
私が正気を保ちながら貞子と部屋で過ごす事なんて不可能だ
退出願いたいが恐ろしいので私が退出するとして腰が回復するまで一体どれだけの時間この狂った空間に滞在しなければならないのか………
(………どうしよう………めっちゃ怖い………死にそう………いや!ごめんなさい!呪わんといて!死にたくない!!!)
貞子をガン見しながらも逃げ出す期を伺っているその時だった
「ごめん、そんなに驚くと思わなくて」
突然響いた男性の声
そして長い黒髪をかき上げた貞子の姿に目を見開く
「………彼と僕が似ているから間違われない為にわざとした事なのだけど、やり過ぎたかな」
困った様に下がった眉、微笑を浮かべたその顔は
「………………イルミさん…………」
彼そのものだった
………………しかし彼では無い……………
またしても私の頭は混乱を極める
貞子さながらのハイクオリティー這いずりを見せたのは彼そっくりの人物……………
……………人物……………?
私を見据える瞳は心配気に揺れていてぼんやりした意識の中「本当にごめんね」なんて優しい声が聞こえる
「…………あの、話しても良いかな?」
目の前の人物は確かに彼そっくりだ
しかし物腰柔らかく漂うおおらかな雰囲気が彼とは別人なのだと認識させた
「……………えっと………誰ですか……」
恐る恐る開いた唇
彼と良く似た容姿の男性は淡く微笑みながら
「シュライア=ラミダス7世、このラミダス城のかつての王だ」
凛と通る声で告げた