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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第76章 彼ともう一人の人物






仕事なのだから仕方がない

彼は遅刻ギリギリだと言っていたし本当に無理をして予定より長く私の傍にいてくれたのだろう




そう頭では解っていても襲う恐怖と不安



昨夜の物とも異なる嫌に早い鼓動にその場で胸を押さえていると


視界の端で何かが動き反射的に勢い良く視線を向けた先の光景に心臓が一瞬止まった



「………ッ!!!!!!!!!!」



声に成らない声を上げる私の目の前で扉から人の脚がすり抜けて来る

人が壁を抜ける瞬間を目の当たりにした事は勿論無いが
実際に目撃すると口をパクパクさせて固まる他何も出来ず

ぬっとその全貌を見せた人影に私は身体が痙攣した様に震えまくっていた


力無く垂れた頭

一歩足を運ぶ度に揺れる長い黒髪

その隙間から見える白目の無い真っ黒な瞳

全てが異質で恐怖心しか抱けないその存在は突然床に倒れると高速で這い出した





「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」



逃げ出したくとも完全に腰が抜けて足腰に力が入らず叫ぶ

自然と視線で存在を追ってしまうのは恐怖の中だからこそ現状を把握しておきたい本能からだろうか


何に似てると言われれば貞子としか言い様の無い存在は人間には有り得ない速度で部屋中の床を這いずり回っており

私は自身の心臓が意外にも強固な事を強く恨んでいた



(気絶しろ!気絶しろ!気絶しろ!気絶しろ!気絶しろ!気絶しろ!気絶しろ!!!!)



ボロボロ溢れる物が涙なのか鼻水なのか解らない

霊能力を持っているなら何かしら対策を取れる筈だが私はまだまだ生まれたての赤ちゃんだ

成す術無く無力に震える私に一体何をお望みだと言うのだろう


私は只這いずり回る存在に謝り倒している



「ごめんなさいぃぃぃぃぃッ!!!!!ごめんなさい!すみません!!!」


何なら土下座したいが動けない


兎に角私には何も出来ないのだと祈り続けていると高速這いずりを見せていた貞子は唐突に立ち上がり静かに椅子に座った



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