ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第75章 豹変
私は何の力も持ち合わせ無い一般人だ
だけどビリビリと感じる怒りの感情が肌に伝わり身が危ないという事は本能で解る
「口?」
私の涙を親指で拭いながらも眉間に寄ったシワを深くする彼に現状把握が追い付かないままでいると突然
バァンッ!!!!!
激しい騒音が鼓膜を揺らした
訳が解らないまま固まる私にパラパラと木片が落ちる感覚が現実を教える
「…………え…………?」
「…………。」
気が付いた時には私を潰す様に大きなチェストやテレビ台が身体を挟み込もうとしており
「怪我は無い?」
突然襲った家具から私を守っていたのは動きを制する様に伸ばされた彼の両手だった
「………………何…………?」
またしても頭は混乱し辺りを見渡せばあの女性の姿は忽然と無くなり
彼の両手はチェストとテレビ台にめり込んでいた
「っ………イルミさん大丈夫ですか!?」
「これくらい何て事無いよ」
「…………」
「…………。」
一体何が起きたのか解らず呆然とする私
ふぅっと息を吐きながら気だるげに立ち上がり辺りを見渡した彼
困惑しながらも私の頭は情報処理を急いていた
忽然と消えた女性は消える間際禍々しい怒りの表情を見せた
そして何故か家具が飛んで来て彼に守られ私は無傷
何らかの念能力者かとも思ったが其ならば彼が気付かない筈が無い
そう言えば彼は帰宅してから一度も女性へ視線を送っていなくて
女性の姿すら認知していない様な態度だった
彼が私の言葉に見せた困惑………
ひとつひとつを繋ぎ合わせ私が答えを導き出す迄に時間は掛からなかった
「イルミさん…………見えなかったですか…………?」
「だから何の話?」
「………………………」
私は確信めいた何かを掴んだ
ゾクリと震える背筋
きっと顔色は最悪に違いない
「見えてなかったんですか……?」
恐る恐る発した言葉に
「うん。」
彼の単調な声は静かに響いた
不可解な現象の数々
腑に落ちない点は沢山ある
昨夜湖畔にいた彼の姿が何なのか
彼があの女性に好かれいる理由とは何なのか
……そして………………あの女性の実体は……………
「あの人はオバケって事……?」