ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第75章 豹変
「その女の人誰ですか………何で部屋にまで連れて来るんですか……?」
「………何言ってるの?」
「はぐらかさないでください!!!言い訳なんか聞きません!!!早く答えてください!!」
「……ちょっと落ち着いてよ、どうしたの」
「………っ………イルミさんどういうつもりですか……私をどうしたいんですか………」
「……沙夜子落ち着いて」
「落ち着ける訳無いでしょう!!隣の女性は誰かと聞いてるんです!!!」
「………隣……。」
白々しく現状を濁す彼に私は遂にその場で崩れた
涙が溢れて止めどなくズキリズキリと痛む胸に絶望が広がり
自身の感情が解らなくなって悲しみと苦しみが脳内を支配して行く
「………ちょっと沙夜子しっかり呼吸して」
彼にしては少し荒げられた声が傍に落ちて肩に温もりを感じる
「…………イルミさん………」
「隣の女性って何。」
「っ………はぐらかさないでくださいって言いましたよね………昨日の夜も湖に二人でいてたじゃないですか……私達目が合ったでしょう……?」
優しく肩を抱き撫でる彼の手に溢れる想いが苦しくて彼を見上げれば彼は困惑の眼差しを向けていて
「昨日って何の事。俺は沙夜子と過ごした後此処から10㎞離れた場所に移動して此所には居なかった。」
真っ直ぐに私の目を見詰めながら紡がれた言葉に何が何なのか解らなくなった
彼は嘘を付かない
私は彼にそう感じていた
だけど見た事を虚偽だと言われても信じられなくて混乱して行く
「………何でそんな嘘………だって私………」
「………沙夜子はさっきから何の話しをしてるの?」
怪訝に潜められた眉と珍しく戸惑った声色に言葉を失いながらもいつの間にか彼の隣に立っている女性を見上げて私は短い悲鳴を上げた
美しい女性の顔は激しく怒りに歪み、吊り上がった瞳に白目は無く漆黒に染まり長い金髪がうねり逆立っていてあまりもの変化に咄嗟に彼の腕へすがり付く
……彼女は一体何者なのか…………?
頬まで避けた口からギリギリと歯軋りが聞こえて理解不能な事態への恐怖に身が震える
「イ……イルミ……さん………だから、こ、この人は誰なんですか………目が…………口………え………?」