ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第75章 豹変
時計の針は10時を指していて
彼の昼迄に帰るという言葉にソワソワと身体を揺らしているとカチャリと開く扉の音に私の心臓は跳ね上がった
「お、お帰りなさい!」
出来るだけ冷静に、なんていつもと変わり無い声を漏らした後に私は激しい絶望感に言葉を失った
「ただいま。起きてたんだ、珍しいね。」
「………………っ………」
「……………。」
緊張の面持ちでソファーから立ち上がり振り返った先
彼は昨夜の女性を何食わぬ顔で引き連れて帰宅した
………………何故……………?
色々な感情がぐちゃぐちゃに混ざり私が今どんな表情で彼を見詰め
今何処に立っているのかさえ理解出来ずに只自身の荒い呼吸だけを感じる
……………私が考えていた様な関係ならばわざわざ女性を部屋に連れて来る事があるだろうか………?
……………浮気だった……………?
本命を連れて私を追い出しに来たのだろうか
冷静さは微塵も無くなり痛む胸に何もかもが崩れて行く
見開いた瞳から涙が溢れ出して無意識に握った拳が震えた
……………彼が何を考えているのか解らない……………
悠々と歩く彼の背中を追って歩く女性は恥ずかしそうに頬を染め美しい顔を俯かせていた
その表情から私には解る
あの人は彼に好意を寄せている事
……………何故……………
彼が悠長にジャケットを脱ぐ様を見詰めながらも私は只立ち尽くしている
女性がそんな彼に並び立ち手を伸ばす姿に身が引き裂かれそうに痛いのに言葉は見付からなかった
まるでスローモーションの世界を見ている様なそんな最中
手を取ろうと嬉しそうに伸ばされた女性の手を彼は上着を乱暴に脱いで距離を取る様な仕草を見せた
先程とは違い悲しそうに瞼を伏せて手を戻した女性の姿
そしてこんな異様な光景を見せておきながら彼は落ち着き払った様子で上着をラッグに掛けている
荒い呼吸の合間開いた唇から涙と同様に溢れる言葉を紡いだ
「…………イル"……ミさん……昨日から何考えてるんですか」
「え?」