第75章 豹変

私の名前や彼の職業が毎回偽造されている事から女性との間柄も偽造の可能性が高いがわざわざ夫婦で無くとも良いと思ってしまう


………あの女性が妻ならば私はフロントでどの様に登録されているのだろうか


本当に美しい女性だった


同性すらも見惚れる美貌に私の何処が勝るのかと言われれば勝目は無い

彼の隣に並びどちらが相応しいのかと聞かれても勝目は無い

…………だけど…………だからと言ってはいそうですか、と彼の隣から居なくなるなんて簡単には出来る筈も無い


例え見劣りしようとも何だろうとも私は彼が大好きなのだ

そしてその気持ちは誰にも負けない自信がある

彼の優しさに、素顔に触れる度に膨らむ想いは増える一方で


……………何故こんな事に…………？


何度打ち消しても脳裏に浮かぶ二人の光景


私は確かに彼と目が合った


ズキリズキリと痛む胸に視界がぼやけて行く


彼が女性と親しげだった事にも酷く傷付いた

私にだけ向けるものだと思っていた穏やかな表情を他の人に向ける彼の姿

そして女性を追って向けられた背中が何より悲しかった


あの女性は誰なのか

彼の何なのか


次々押し寄せる感情に押し潰されそうに成りながらも私達が宿泊する部屋の扉の前まで戻って来ていた


……………私達……………



…………本当は彼がいる部屋を突き止めて問い詰め様と思っていた


だけど其れをして何になるだろう


私はきっと泣いてしまうし支離滅裂に成ってしまう

どう考えたって冷静な話し合い等不可能


其れに良く考えてみれば彼は女性と親しげだったには変わり無いけれどキスをしていた訳でも手を繋いでいた訳でも無い

まだ浮気の可能性を断定出来ないのだ