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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第75章 豹変





部屋の扉が閉じる音は広い廊下にやけに響いた

バクバクと煩い鼓動は身体中に脈を打つ


………先程の光景は夢だったのではないか……………


なんて思いを冷えた指先の感覚が現実へと引き戻し私は扉に背を預けたまま立ち尽くしていた


無意識の内に流れる涙がうつ向いた瞳から落ちて足の甲で弾ける感覚に今自身が裸足である事に気付く


あの女性は一体誰なのか


湖畔で見せていた彼の穏やかな表情が脳裏に浮かんでは痛む胸

私はフラフラと一階のフロントへと向かっていた


彼が今他の女性とこのホテルの何処かに居るのだという確信は無い

………いや………確信が無いと言うより現実味が無かった


女性を追って彼はこの建物へ戻った

その姿を目撃した以上その事実を疑う余地は無いと解っていても信じられなかった


裸足のまま階段を駆け下りる



一階フロアは昼間とはまるで違いシャンデリアの光りが点らず石壁に設置された蝋燭の灯りが頼りの暗く静寂が襲う空間に成っていた



………普段の私ならきっと歩み出す勇気等無い場所へ真っ直ぐに歩みを進めフロントのベルを鳴らす


シンと静かな広間にチンとベルが響く中、私はずっと彼の事を考えていた

彼の穏やかな表情や優しさは私だけに向けられているなんて自惚れだったのだろうか

昨夜星空を眺めながらまるでその形には見えもしない星座を指差した彼は何を思っていたのだろうか

『大好きだよ』と私を抱き締めた素肌の温もりは……………



「如何なさいましたか………?」


「あ!………夜分遅くすみません……」


気が付けば昼間見たフロントのおじさんがカウンター越しに心配気な視線を向けていた


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