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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第74章 古城のホテル







「………早く帰って来てくださいね……?」


「解ってると思うけど外出は禁止だよ、出来る限り早く戻るから待っていて。」



なんて私の髪を一束掬った彼はそっと唇を落とすと再び背中を向けた

悠々とした歩みに胸が切なく寂しさが込み上げる




「あの……お気を付けて!!」


「うん、行ってくるよ」



2、3歩追い掛けた私の足はバタンと閉じた扉を前に止まった

後ろ手に手を振り出て行った彼を今すぐに追い掛けたい

………そんな事を出来る筈が無いと解っていても寂しくてどうしようもない気持ちだ


振り返った室内は先程迄の穏やかな空気を無くし、唐突に訪れた静寂が耳に付いた


私は居ても立ってもいられずにバスルームに飛び込んだ


孤独感を強く感じてしまうのは仕方ないけれど押し潰されてしまいそうでじっとしていられなかったのだ

シャワーを浴びて落ち着きを取り戻し、早い所寝てしまおうと思ったのだが私の脳裏に意思とは無関係に昼間見た肖像画が過った


「…………」



………………私は今この部屋に一人だ



シャワールームから出る迄にそう時間は掛からなかった


理由は曇った鏡が怖かったからである

簡単に感情が傾いたのはきっと肖像画にホラーのテイストを感じたからで

私を孤独と恐怖の二重苦が襲う


バタンと洗面所の扉を閉じて足早にテレビを付けた

シンとした部屋では些細な物音にすら敏感に成ってしまう


髪も乾き難いこの季節だがドライヤーも使わずガシガシとタオルで髪を拭っているのは風呂場や洗面所で出るオバケが最も恐いと勝手に思っているからだ


「……………」


部屋を見渡せば昼間はあんなに太陽の光が入って明るかったのにいつの間にか薄暗く少し不気味な雰囲気に成っていた


果たして本当に同じ部屋なのだろうか、なんておかしな事を考えてしまう程昼間と今では部屋の印象が違って見える



…………いや………彼が立ち去る迄こんなに暗く感じただろうか…………?



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