ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第74章 古城のホテル
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私達はのんびりと読書タイムを経て夕食に舌鼓を打っていた
なんでも部屋食はペントハウスのこの部屋でのみ受けられるサービスらしくその特別感もまた私を舞い上がらせた
毎度部屋食だと言われればそうだがボディーガードに囲まれたフロア、メイドさんが立ち入る際も必ず報告の入るホテルとはまるで気分が違う
他の宿泊客は見掛けていないがお世辞にも立地が良いとは言えない土地からそもそも宿泊客が少ないのかもしれない
………レストランはどんな雰囲気なのだろうか
数日は此所に宿泊するのだし彼に頼んで一度くらいはレストランに出向きたいなんて思い立ち彼へ視線を向けて私はぼんやりしてしまった
カチャリとナイフの音がして一口大のラム肉が形の良い唇に消える
「………どうしたの」
「……いえ」
彼は本当に上品に食事をする人だ
その容姿からも漂う潔癖な美貌、更に所作は余裕を含ませた繊麗な物で特別何をしていなくても人目を惹くだろう
私の様に完全に心奪われ陶酔する人なら尚更で
「口に合わない?」
「いや、めっちゃ美味しいです!」
恋人に成った今ですら全く彼に飽きる所か慣れる事すら儘ならない
………誰だろう美人は三日で飽きるなんて言った人は嘘つきだ
彼の麗しさに毎度目眩ましを受けている私は時々彼と会話を交わしている事すら不思議に成るのに
「このヴァプール焦げてない?」
「………ヴァ?」
「その右の魚。」
「そうですか……?美味しいですけど」
私の言葉に彼は稀薄ながらも表情を変えてお揃いの時間を過ごしているのだと思えば今この時泣きたいくらいに幸せを感じた
黙々と料理を口に運びながらも魚料理はお気に召さなかったらしくそっと遠避けられた皿に笑みが漏れる
彼は時々食事を残す
少食だからという訳では無いし好き嫌いが激しいという訳でも無い
彼は基本的に何でも食べるし苦手な食材も食べられないという訳では無い様だ
只、少しでも気に入らないと残して他の料理を注文するという暴挙に出たりする
……しかし彼は私の手料理を一度も残した事が無い