ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第74章 古城のホテル
階段にて私の妄想設定発言に凍てつく様に冷たい視線を注いだ彼だが今は完全に私を無き者として扱っている
現に彼は私の言葉に返事は愚か視線すら向けずにソファーでスマホを操っている
…………別に挫け等していない
冷静に考えれば相当頭がおかしいのは重々承知だが、私はこれで結構楽しいのだ
彼も少しくらい付き合ってくれても良いと思う
一生無理だと確信はあるが
バルコニーから辺りを見渡すと広がるのは自然ばかりで他に何も無く木々がざわめく音が聞こえる
寄り添う様に揺れる湖を見下ろせばその全貌が見て取れて穏やかな気持ちに成った
「ほんまに綺麗……私ここ好きです」
自然と漏れた言葉
「痛い人ごっこは終わった?」
彼はいつの間にか私の直ぐ後ろに立っていて呆れ顔ながらも隣に並び立つと湖を見下ろした
「……痛い人じゃないです!……設定は宝石商の娘で貴族で世界中を旅して「あっそ。其れより夜に成ると沙夜子の好きな花が見れると思うよ。」
「私の好きな花……?」
「クリスタルローズ、光る花だよ。」
「あの植物園で見た花ですか!?」
「うん、湖畔に蕾が沢山あった。」
「まじですか!テンション上がりました!!!」
「ずっと高いじゃん。」
「高いですけど!!」
「興奮状態が長引くと心臓負担で死ぬよ。その内死にそう。」
チラリと寄越された視線と視線が交わり、ふっと笑みを浮かべた彼の姿にドキドキと騒がしく胸が高鳴った
その姿が余りにも絵に成って麗しく美的だったからで
途端に先程迄の馬鹿な思考はなりを潜め
「…………死にませんよ」
精一杯絞り出した声は露骨に小さな物だった
クスリと落とされる笑い声が擽ったくて頬が熱を帯びる中、風に流れる髪を大きな手で掬い抑える彼の姿を私はいつまでも見詰めていた