ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第74章 古城のホテル
………考え方ひとつで景色は変えられる………
肖像画………この重厚な雰囲気に相応しいではないか
ホテルの人は中々に高貴な趣味をしている
宿泊客が貴族にでも成った気分を味わえる粋な計らいだ
先程迄不気味に思えていた肖像画が美しく崇高な芸術品に見えてきた………
折角メルヘンな世界感に浸れるのだから浸っておいた方が楽しいに決まっている
そうと決まれば妄想の設定だって気分を上げる素敵なアイテムに成る
(…………そう…………私は宝石商の娘……素敵なフィアンセと世界を旅しているの………)
すっかり気分を持ち直した私は美術館にでも来た気持ちで優雅に肖像画を眺めながら溜め息を漏らした
「………この画家は腕が良いわね……モネかしら………ふふっ」
「頭でも打った?」
_________"
私達の宿泊する部屋は想像よりもずっと魅力的だった
大きなアーチ状のガラス扉を開け放てば広々としたバルコニーが広がり真っ白のカーテンが揺れて室内に風を運ぶ
やはり繊細な彫刻が施された石造天井は高く無駄な装飾品で飾らないシンプルさながら品のある雰囲気は格段に美しい
広々としているのに親しみ易い空間には天外付きのキングサイズベッドと上質なソファーとテーブル
バルコニーから望む雄大な自然が心地好く、さながら田舎に建った古城と言った所だろうか
都会の喧騒を忘れ華やかな貴族が羽を休める隠れ家
壮観にして上質ながら落ち着く温もりを感じるのは立地や雰囲気は勿論、家具のセンスや色味迄素晴らしい気配りがされているからだろう
なんてうっとり室内を眺めた後
ドレスでも纏っている気分で開け放たれたバルコニーへ出てくるくる回る
「はぁ……素敵ね、貴方とこうして此所へ来れるなんて……幼少期に良くお父様とお母様と訪れていたの」