ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第74章 古城のホテル
素敵なお城に不釣り合いなジーンズとスニーカー姿の私だが気分は中世ヨーロッパの貴族である
………あくまでも気分だが本当のお城では無いのだしラフな見た目でも構いやしないだろう
立派なエントランスを潜れば広々とした広間はフロントに成っていて閑静でいて優雅な雰囲気が漂っていた
快晴の空から差す光が窓から注ぎ美しく磨き上げられた石床に反射して目に眩しい
「此所で待っていて。」
と言い残し手続きをする彼を尻目に私は夢中で広間を見渡していた
遠く高い石造天井は細部迄彫刻が施されシンプルな空間に華を添える
吊り下がった大きなシャンデリア
広間を支える柱はゴージャスながら所々見て取れる綻びに長い歴史を感じさせた
装飾品は中央にある立派な花瓶と色鮮やかな花々のみと決して飾り立てている訳では無いのに漂う優雅な空気は建物自体の雰囲気なのだと思う
「行くよ。」
「はい!」
一体どんなお部屋なのだろうかと弾む胸にやはり私も乙女だな、なんて思う
彼に知れたら冷ややかな視線を向けられそうなので口にはしないがそれでもやはり踏み出した足取りは軽いものだった
そんな私達を呼び止め荷物を持ってくれると若いベルボーイさんが頭を下げてくれたのだが彼の冷たく放たれた「必要無い」に青年は凍り付いた
…………私は重たいリュックを運んで貰いたかったが青年はすっかり怯えきっていて頼めそうに無い
親切なサービスで声を掛けてくれたのに青年が可哀想だ
こういう場面で彼を注意出来るのは私しかいないだろうなんて青年に対しちょっとした親切心は
「………もうちょっと優しい言い方で……「どうでも良い、行くよ」
呆気なく失敗に終わり私は深々と頭を下げた後に彼の背中を追った
やはり私と彼のパワーバランスは対等から程遠いが
遅れる私を静かに待ち振り返った彼の眼差しは優しい物だった