第73章 愛の実感

11月03日



私達は天空闘技場の見えるホテルを旅立った


飛行船で約1日半程掛けてサヘルタ合衆国へとやって来ている

聞き馴染みの無い地名に何処かと尋ねれば


「ヨークシンのある国。」


と教えてくれた



彼にもらった花は枯れてしまってドライフラワーにしたいと申し立てた私だがもう手遅れだとバッサリ言い捨てた彼の手により呆気なくゴミ箱に消えた

彼の贈ってくれた気持ちだけをそっと胸に仕舞い込んだ私だが、もし次に花を贈られたなら即日保存に向けた施しをしようと思う


移動の度に減って行く荷物


彼はホテルの従業員に譲っていると話していたが実はひっそりと彼が処分している事を知っている

少し考えてみれば私や、まして彼の生活した痕跡を彼が残す筈が無いと納得したので黙っているが不要に成った夏服と共に元の世界から持って来たお気に入りの洋服までもがゴミにされたのは中々にショックだった


そして私達は新境地へと歩みを進めている訳だが



「イルミさん……………こんな所にホテルなんかあるんですか」


空港から車で3時間程走った所で彼は唐突に盗難車を乗り捨てて鬱蒼とした森の中を歩き始めた

何でもこの辺りで入っている仕事は一件のみで長期滞在予定は無く仕事現場付近のホテルで3泊程の滞在予定らしいのだが

人里も無く只自然の広がる景色に果たして宿泊施設があるのか甚だ疑わしい……