ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第66章 言いたい事はひとつだけ
ケーキを下見して余ると解ったお金
彼はきっと御釣りを受け取らないだろうと思った
カフェでその殆どを支払ったのはヒソカさんで端数にその小銭を使った
私が持っていても意味が無いしヒソカさんの言った通り彼が私に現金を持たせたくないならば手元から無くしてしまえば良いのだと
「何が違うって言うの?言い訳なんて聞きたくない。」
冷たく突き放す言葉に溢れて頬を伝う涙
「……違うんです………」
「言いたい事はそれだけ?」
私に向けられる冷たい視線に身が裂かれそうに成りながらも彼に歩み寄る
…………言いたい事…………
私が言いたい事はたったの一言
「イルミさん……お誕生日おめでとうございます……」
大きく見開かれた瞳
彼の手元に紙袋を差し出せば彼はその顔に後悔を滲ませた
「まだ早いですけど………すみません。イルミさんのお金やけど……私が貯めて私が買いたかったんです」
涙声を詰まらせながらも伝えた先彼はガシガシと頭を掻きながら溜息を付いた
短い沈黙に私の鼻を啜る音だけが響く中
「ごめん沙夜子。」
彼は優しい手付きで私の頬を拭ってくれた
私がどんな顔をしていたのかは解らないが涙でぐちゃぐちゃの顔で笑顔を向けたのだから恐ろしく不細工だったに違いない