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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第66章 言いたい事はひとつだけ



________"




「おかえり。」


「…………た、ただいま………」


私の目の前に広がっていたのは数時間前に出た筈の部屋の面影が消えた場所だった

家具の全てが原型を留めていない部屋に親方のケージだけがまともな姿のまま残されていた

そしてその残骸の上に腰掛けた彼が酷く無感情に言葉を投げ掛ける様子は異様そのもので

私はその場で金縛りにでも合った様に動けなくなった


彼の瞳が私の手元にゆっくりと落とされて再び視線が交わるほんの一瞬の間に冷や汗が背中を伝う


彼が不機嫌に成る理由やきっかけはこれ迄で理解している

しかしこれから誕生日を祝おうという時に最悪の状況だ

更には私は彼に言われた言い付けを忠実に守り、失望される様な事は微塵もしていない


其れなのに彼が私に向ける瞳には猟奇の色が滲んでいた



彼が嫉妬深い人だという事は重々知っている

しかし今の様子から其れは以前にも増して強く根深い物に成っているのでは無いかと思わせた


「随分楽しそうだったね。」


「……え」


「カフェにいるの見掛けたよ。」


「え、じゃあ声掛けて「その為に金が必要だったんだね。」


「え……違「欲しい物は無いんじゃなかったの?何それ。買い物したいなら俺が連れて行ってあげるよね。」


「イル!「生活の張り合いとか言って嘘付いて何なの。俺よりヒソカとショッピングに行きたかったんだろ。」


口を開いても言葉を続ける彼に声を失う

潜められた眉が悲痛に歪み

彼を深く傷付けてしまったのだと理解する


「俺は沙夜子の物を買ったって困りはしない稼ぎがあるのに……何が不満な訳?」


………違う


「どうして俺だけじゃ駄目なの………嘘まで付いてヒソカと出掛けて楽しかった?」


…………違う


「他の奴と出掛ける為の資金が必要だから俺とキスしたんだよね。」



「………っ違います!!!」


潤む視界で彼を見据えて上げた声は大きく響いた

そう思われても仕方がないかもしれない

だけど私は純粋に彼を祝いたい一心だった



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