ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第66章 言いたい事はひとつだけ
何かが切れる音がして瞬時に背中を向けて歩き出す
制御を忘れて漏れる殺気に通行人が倒れ行く様すら腹立たしい
只彼女の全てを奪い去りたい衝動に駆られる
彼女が笑い掛けているのが許せなかった
彼女の行動原理に他人が関与している事が許せなかった
足の腱を切り裂いてしまおうか
手も必要無い
食事も着替えも全て俺に依存すれば良い
彼女が誰かに声を発するくらいなら唇を縫い付けてしまっても良い
誰かのものに等させない
沙夜子の世界の全ては俺だけで良い
しんと静かな部屋に舌打ちだけが響く
彼女が居なければ帰って来たかった筈のホテルの一室は只のがらんどうだ
パタパタと響くスリッパの音が聞こえないだけで焦燥に胸が焼かれそうに成る
平静を装い掛けた通話に彼女は直ぐに元気な声を響かせた
「もう帰ったんですか!私も直ぐに帰ります!」
「………解った。」
「それでは!『イルミかい?♥️』
ヒソカの声が近くに聞こえて手の中のスマホは粉々に潰れた
「………俺の殺気に気付かない訳無いよね。」
彼女が自身とキスして手に入れた金はヒソカとの下らない外出に消える
腹立たしい
腹立たしくて仕方がない
全てを壊してしまいたい
傍にあったテーブル、ソファー、装飾品の全てを破壊した頃
瓦礫の山が広がる部屋に彼女は帰宅した