ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第64章 ショッピングモールと私と彼
チラリと背後を盗み見ると彼は特段気にする様子も無く腕組みしながらぼんやりしているが
周りの人々の視線がこれでもかと彼に刺さっていた
そして私は気付く
…………辺りに他の男性を見掛け無い…………
…………もしかして此方の世界ではこのコーナーへの男性の立ち入りは禁止なのか…………?
彼はそもそもネットや執事を通して買い物をすると以前話していたので俗世間のルールに疎いと私は思う
はっきり禁止されていないにせよこの世界では暗黙の内に男性の立ち入りを禁止している……なんて事は無いだろうか………
額を流れる汗をそのままに私は手近にあった物をわし掴み彼を振り返った
「さ、さぁ行きましょう!」
妙に裏返った言葉に黒々とした瞳が向けられて気まずさは頂点に達する
無言無表情を貫く彼が何を考えているかなんて全く見当も付かないがとにかくレジ迄引っ張り歩いた
あの場にあれ以上留まるなんて居たたまれ無さ過ぎて私には無理だった………
レジが目前に迫る頃、私は恐る恐る彼を見上げた
普段と変わらぬポーカーフェイス
「あの、お会計私がひとりでしても良いですか………?」
私が一緒なので別に彼がおかしな人物だとは思われないにしても
化粧品と生理用品なんてラインナップを彼氏に購入させて隣で見ているだけの女なんてろくでもない人物だと私は思う
そんな人物にも成りたくないしそんな事を彼にさせたくないと思ったのだが
「どうして?」
彼は可愛らしく小首を傾げた
………………何故私の意図が伝わら無いのだろう…………
今の状況を共に行動していた人物に一から説明するなんて考えてもいない事態だ
「…………あの、私が買う物が女性の物ばっかりですし……イルミさんがお会計するのはちょっと………」
おずおずと説明をする私に彼は手元の購入物に視線を落とした
「…………あぁ。そうだね、はい。」
なんて簡単に財布を手渡してくれた彼だが
この時初めて購入物に気付いた様な反応に少し困惑してしまった
警戒を怠っていた様には見えなかったが何処かぼんやりしていた様子からあのコーナーすら認識していなかったのかと思うと私は何に焦っていたのだろう………なんて思った