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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第64章 ショッピングモールと私と彼






ゴンドラに良く似た手漕ぎボートが浮かび観光客らしき人々が楽しそうに揺られている

運河を挟んで両サイドにはレンガ造りの建物が模されており沢山のブティックや雑貨屋さんが所狭しと並んでいた


まるで室内都市の様な風景はアミューズメントパークを思わせてドキドキと胸が弾んだ

物静かな彼が好むとはとても思えない場所だが私の事を考えてくれたのだろうか……なんて見上げた先


「………さ、好きなの選びなよ。」


彼は単調に言うと私の歩調に合わせて歩き始めた

忙しなく辺りを見渡していると陽気な雰囲気に目的が何だったのか忘れてしまいそうになる

この調子では洋服を選び抜くのにかなりの時間を費やしてしまいそうだ


「……イルミさん……」


「…………。」


静かに呼び掛ければ続きを待つ大きな瞳が私を見下ろす


「服見てからこの中で遊んで帰りたいなぁって……」


なんておずおず言葉を紡いだ私だが


「良いよ。」


彼は私の思考回路等お見通しだと言いた気に快諾してくれた


俄然服を選ぶ気が沸き上がる


後ろ髪引かれずとも後々戻って来れば良いのだと思えば目的だけに意識は集中し始めた


連なるブティックの中からカジュアルな店を選び店内へ入れば自然と離れる大きな手


チラリと彼を盗み見れば彼は私の後ろに黙って着いてきていた

一緒に選んでくれるなんて事は無いにしろ以前なら特段興味無さそうに店先や店内の端で佇んでいたのだが今の彼は私の背後で待ってくれている

些細な変化ながらその行動は私達の心の距離が以前よりもずっと近付いたのだと思わせた

自然と緩む表情が見えぬ様に洋服に向き合いながらも胸に溢れるのは幸せだった

大好きな彼とショッピング

普通のカップルなら当たり前の事なのかもしれない

だけど私からしてみれば今この瞬間もこの上無い幸福なのだ



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