ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第63章 鈍感な感情
彼がもしも稼業に罪悪感を抱いてしまったなら罪の意識に押し潰されてしまうのでは無いかと思った
しかし徹底して他者の死に無関心な口振りに私は酷く安堵していた
そして彼自身が理解出来ていない感情は私には簡単過ぎるくらいに明白だった
じっと私を見詰める瞳は何故か幼く見えた
「イルミさん、それは不安って言うんですよ」
「…………不安」
彼は聡明で物事を深く考える慎重な人だ
しかしその思考に希薄な感情が付いて行かなかったのだろう
「………ふーん。」
彼の横顔は先程迄とは違いどこか晴れやかに見えた
不安原因やその要因よりも漸く追い付いた感情への戸惑いが大きかったらしい
彼の思考は解らないが彼にリスクが付きまとい、私にもリスクが向けられるかもしれないという現状に関しては彼の中でしっかり現実として受け入れられているのだろう
「あー疲れた。」
なんて漏らした彼はすっかり普段を取り戻し
「………で、沙夜子は一体何をしてた訳?」
テーブルに広げたままの彼の写真集とアルコールの空き缶を呆れ顔で指摘したのだった