• テキストサイズ

ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第11章 色の無い世界での一週間






そしてあの日



俺は直ぐ側で一際念が揺れるのを感じた


此方に来る際に見た異次元の扉がそのシルエットを表した


(……………タイムリミットか………)



時計を確認すれば彼女は昼のアルバイトから帰宅している時間だった


(…………間に合って……)



仕事を放り出して走って帰宅したが彼女の姿は無く部屋から出ようと玄関扉に手を掛けたがそれ以上進めない引力に焦りが浮かんだ


自身に出来る事は待つ事だけ


歯痒さに舌打ちをする


お願いだから出て欲しい


何度目に成るか解らないコール音を聞きながら彼女の名を呼ぶ

キッチンに行けば蘇る寝惚け眼の彼女の姿

寝癖をぴょんぴょん跳ねさせて魚を焦がして苦笑いを浮かべる

洗面所を見れば懸命に髪の毛をセットする横顔
自身との外出の為に努力する彼女が健気だと思った

風呂場では停電して悲鳴を上げる彼女の姿、暗闇でもはっきりと見える姿にどうするべきか悩んだりした

トイレを見てみれば扉の引っ掻き傷に女に迫られ怯えた彼女を思い出す
自身を見た瞬間に安堵して抱き付いた彼女

俺が守れて良かったと、震える彼女をこれからも守ってやりたいと強く思った

もしかしたら彼女の事を守るだけの力を付ける為に努力してきたのかとそんなメルヘンな事を思った自身が気持ち悪かった


狭い居間には沢山の思い出がある

数えれば切りがなく思い出すのは彼女の様々な表情でまるで百面相だ


段ボール箱に入った仕事着に袖を通し仕事道具を仕舞う

小さな鞄に入るだけの彼女との思い出を詰めた


………彼女に会いたい



願いを込めてかけ続けた電話はやっと彼女の声を響かせた


『もしもし!』


元気に弾けた声にズキリと痛む胸


別れを示す自身の言葉に彼女は悲痛な声を上げた


『………うそ………!待って!!まだ………』




………大丈夫だよ沙夜子。限界まで待ってるよ…………




/ 1349ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp