ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第60章 異世界の魚達
「……イルミさん」
「何。」
「この水槽ってどれくらい分厚いんでしょうか………」
私は決して楽しく無い訳では無いのだと彼に伝えようと思った
十分に楽しくて私は幸せだ
………只この場所が怖いのだ
「……これだけの水圧に耐えるんだからm単位だろうね。沖縄の大水槽で確か60cmだった筈だしその倍は確実だよ。」
「………成る程。じゃああの子がジャンプしても割れませんね」
私がチラリとはしゃぐ子供に視線を向ければ彼は途端に呆れた表情を浮かべた
「馬鹿じゃないの。あんな子供一人でいちいち硝子が割れてたら営業出来ない。」
「………ですよね」
ふぅっと息を吐いた彼は私の顔色を伺う眼差しを向けなくなっていた
どうやら私が馬鹿な理由で怯えているのだと理解してくれたらしい
……………少々腑に落ちないが彼が落ち込む事は避けられた
健気な彼女なので(自称)複雑な気持ちをぐっと堪えてピラフを口に運び私は目を見開いた
「………美味しいです!」
「そう。」
「何の味かは解らんけど!」
こういったアミューズメントパークの食事は大体高くてたいしたことがないイメージが私にはあった
しかし目の前の料理は想像を凌駕して美味しい
水族館だからなのか魚料理中心のレストランでガウランピラフという物を頼んだ
他の魚の名前が解らずに"ピラフ"という見知った文字から注文を決めた私だったがかなりの当たりだ
プリプリの白身魚が米とマッチして食欲をそそる
「ガウランってさっき見た魚だよね。」
「え!どんな奴でしたっけ」
「沙夜子が泳ぎたくない水槽のやつ。」
………………あ、あいつか……………!!
あんな気持ち悪い魚を……………
ありありと浮かぶ真っ黒の鱗に食欲が失せて行く……………
まさかあんなに不気味な巨大魚を食べていたなんてかなりの衝撃で凍り付く私だったが
「所詮あいつも魚類だね、沙夜子に食べられちゃうなんて。大丈夫だよ、食べられたんだから水槽でも泳げるよ。」
なんてフォローのつもりなのか謎の励ましを聞きながら私は吐き気を懸命に堪えて残りを口に運んだ
「あいつ美味しいんだ。」
「……………はい」