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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第60章 異世界の魚達





10月01日



私はワクワクと弾む胸をそのままに彼を見上げた


私達が今いる場所は水族館と植物園が一体に成った複合施設


私に記憶は微塵も無いが酔った際頻りに『外に行こうぜ!カップル極めようぜ!』等と供述したらしく優しい彼がデートに連れ出してくれたのだ


素面の今考えると恐ろしいが良かったと思う


家族連れやカップルでワイワイと賑わう場所にやって来たのは随分と久しぶりな気がする

普段なら苦手意識のある大勢の雑踏も彼とデートに来たのだと思えば賑やかなBGMに早変わりした


薄暗く照明の落とされた館内の雰囲気に異世界も何も無く

私達の世界の水族館は酷似していた


長い列の流れに乗って彼と並び歩く


「人気なんですねー!」


「パドキアで一番大きい水槽があるからね。」


「そうなんですか!………来た事あるんですか……?」


「無い。」


「じゃあお揃いですね!」


「うん。」


知った様な口振りに以前誰かと………なんて思ったが彼が几帳面で計画的な性格なのを思い出す

この場所をリクエストしたのは私では無く、此所に行こうと提示したのは彼だった

前情報として色々調べてくれたのだろう

私とのデートを想定して探し、調べてくれたと思うだけで身体中が幸福感に満たされた


チケットを二枚購入してくれた彼にお礼を伝えるが彼は気にする様子も無く館内マップを広げた後に


「14時から大水槽で生き物たちのお食事タイムがあるよ。」


なんて可愛い台詞を発した

無表情から発される"生き物たち"という単語と"お食事タイム"という響きは驚く程可愛くて失神しそうになるが


とりあえずもう一度聞きたい。



「え?」


全く聞き取れていない振りをすれば


「14時から大水槽で生き物たちのお食事タイムがあるよ。」


彼は律儀にも同じ言葉を繰り返した

……………もう一度聞きたい。


「ん?」


アンコールを求めてすっとぼけた私だが彼は呆れた視線を落とすと


「……………わざとでしょ……行くよ。」


クールに歩き出してしまった

…………少々調子にのり過ぎてしまった


「ごめんなさい待ってください!」


なんて後を追えば呆れ顔ながらも伸ばされた手にきゅんとする

大きな手をしっかり握れば指を絡め取られてドキドキと心臓が高鳴った




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