• テキストサイズ

ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第59章 愛しい間抜け



_________"



ぼんやり瞼を開くと室内は真っ暗だった

窓から望むは煌めく街並み


「…………綺麗」


吸い込まれる様に窓の傍へ歩み寄れば特徴的な造形の闘技場が一際目に付いた


…………異世界にいる…………とは理解していても実際漫画やアニメで見た建物を目にすると現実味が強くなる


そして私の愛する恋人は異世界人なのだ


ワックスで磨き上げられた焦げ茶色のフローリングにペタペタと足音を鳴らしながらソファーに近付けば愛しい寝息が小さく聞こえる


いつの間にか膝掛けに上体を預けて長い脚を床に放り出した体勢で眠る彼はどうやら深く熟睡している様で私の気配にも反応を示さなかった


傍にしゃがみ込み表情を隠す髪を指先で掬い、耳に掛ければ暗闇に白い肌が浮かび上がった


控え目に頬に触れれば私の指先よりも仄かに温かな体温が伝わってドキリと鼓動が跳ねる


無防備な寝顔が心底愛しい


静かに届く吐息


余程心を許してくれているのだろうと思えば胸が暖かくなる


そんな穏やかな空気の中で唐突に蘇るのは結ばれた2度目の記憶

彼は以前に増して男性味が強くなっていた

1度目は慈しむ様な優しいもので2度目は激しく強く求められた様に思う

じんわり熱が籠る身体はあの日の余韻を思い出していた


淡白な彼の素顔に覗く情熱に身も心も溶けてしまいそうだ……なんて一人考えて恥ずかしく成った


…………一人物思いに更けて照れるなんて世話無い……………


長く影を落とす睫毛を盗み見る

彼からの愛は私にしっかりと届いている

私からの愛はどうだろうか


彼はむやみやたらにキスをしたり抱き締めたりはしないけれど深く伝わる想いを感じている



柔らかな肌を指先でなぞって頬に優しく触れるキスを落とした


…………まだ起きている彼に自ら口付けるなんて出来ないけれど


今私が出来る精一杯の愛情表現


ドキドキと高鳴る心音をそのままに自然と漏れ出した言葉


「…………大好きです」


彼は吐息交じりに短い声を漏らして擽ったそうに小さく身動ぎした


まだまだ起きそうに無い彼の姿に笑みを漏らしながらも私は只寝顔を見詰めていた




/ 1349ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp