ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第58章 彼と浴室
「……そういうのは………それなりに色々考慮して時期を見るし、沙夜子が合意する時だけだから。」
柔らかな声色を辿る様に手元に落ちていた視線を上げれば彼は真っ直ぐに私を見据えていた
思考を見透かした様な台詞
まるで今以上を思うのは私だけでは無いのだと寄り添う様な言葉に私は泣きそうに成る顔でくしゃくしゃに笑った
「沙夜子、いきなり気絶しちゃうからびっくりしたよ。」
「っそれはイルミさんが!!!…………………私どうやってベッドに…………?」
「俺が運んだ。」
「………え…………」
「髪も乾かしたよ、そのままだと風引きそうだし。」
「……………え"…………」
……………………私は全裸で……………気絶した……………………
気絶した人間は鉛の様に重たいとは聞くがそんな人間を介抱出来る腕力は流石だ
しかしそれよりも力の抜けた身体なんて大股を開いていてもおかしくない……………
更には壮絶な体力消耗の末、意識を手放したのだから………
……………気絶した私の顔なんておぞましいと見せられずとも容易に想像が出来た
…………白目…………間抜けに開いた口………………
…………彼に見られてしまった……………
うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
「…………最っ悪………」
「他人の髪を乾かすなんて沙夜子が初めてだよ」
羞恥が一気に沸点まで到達した私は燃え尽きた様に真っ白な灰になる気分だった
きっと間抜けに違いない
この世のものとは思えない恥態を晒したに違いない
……………トイレの水に流れて消えてしまいたい……………
なんて私が自己嫌悪のドン底にいるのを知ってか知らずか
「俺が髪を乾かしたんだよ。案外楽しかった。」
無邪気に同じ話を繰り返す彼の声を聞きながら
何度も消えたい、と思った。