ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第58章 彼と浴室
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「っ………………!!!!!」
ガバリと上体を起こすとスプリングが軋んだ
「…………気が付いた?」
なんて呑気な声に視線を向ければ鍛え抜かれた肉体をそのままにマッチョな腕でノートパソコンのキーボードを叩く彼と目が合った
…………………浴室での事は夢………?
なんて思ったのも束の間何時も通りベッドに横に成っている私だが身体には以前感じたのと同じ倦怠感が残っていた
更には仕事中なのか枕をクッション代わりに使い緩く上体を起こしている彼の格好も普段きっちり衣服を身に付けている事実から肌を晒している事に違和感しか無かった
対して自身はしっかりとガウンを身に付けているが…………
……………艶かしい記憶が走馬灯の様に駆け巡る……………
そして私は至って冷静かつ現実的な疑惑に気が付いた
「………あの………イルミさん…………避妊………しました………?」
行為の最中彼が避妊具を手にした記憶が無い
避妊具があっても100%では無いと聞くが避妊自体を怠るなんて………
不明確な私達の未来
漠然とした不安が押し寄せる
………………彼との子を身籠ったなら…………なんて今まで考えた事も無い事態に手が震えそうに成った
カチャカチャとキーボードの音を響かせていた指が止まる
私はその様子を只静かに見詰めていた
聞こえた溜息にどんな思いが込められているのか
ゴクリと唾を飲み込んだ私に
「ゴムしてたじゃん、当たり前でしょ………何なら洗面所のゴミ箱見て来れば。」
彼は何時もの無表情で言った
「……………ですよね……」
途端に力が抜けて安堵と寂しさが同時に押し寄せた
危惧する様な事は無い
代わりに今以上は無いのだと
今で十分幸せな筈なのにズキズキと痛む胸