第58章 彼と浴室

破裂しそうに煩い心音に瞼を硬く閉ざしていると


ぬるりと舌が這う感覚が走り身体が跳ねた

何をされているのかさえ解らない強い刺激は背中を駆け抜けその場に縫い付ける様に腰に回された彼の手を懸命に握り締める


更にまくし立てる様に長い指が体内に押し入る感覚にビクビクと腰が揺れ自身から聞こえる水音に耳を塞ぎたくなる


彼の舌が執拗に刺激を与え続け、長い指が体内を探る


彼の美しい唇が汚れてしまうという思考は背徳の色に染められて行く


これ以上は耐えられないと見下ろした先トロリとはしたない糸を舌に引き連れた彼はペロリと全てを唇におさめると


「そろそろ挿れるよ。」


わざとらしく指を深くに押し入れた後、私の反応を楽しむ様に瞳を細めた



私がしっかりとした返答を出来たのかは解らない


只彼の熱にほだされたまま壁に手を付いた時、タイルの冷たさに自身の体温の高さを感じた


痛いくらいに早まる鼓動


押し宛られる熱が彼のモノなのだと理解した途端最奥まで貫かれて息が詰まった


どれだけ指で慣らされても圧倒的な質量の違いは圧迫感として身体に伝わり短い呼吸を繰り返す


間抜けに突き出したお尻を優しく撫でる大きな手はそんな私の呼吸が整うのを待ってくれているのだろうか………


なんて少し冷静に成ったのもほんの一時の事だった


がっしりと捕まえられて激しく腰を打ち付けられる

強い快感は全身を走りクラクラと目眩がする

彼が動く度に湯船のお湯が跳ねて水が騒ぎ狭い風呂場には艶かしく濡れた肌がぶつかる音が響く


反響する場で懸命に声を抑えていた私だがそんな理性は吹き飛んではしたなく甘い声を漏らせば


「……沙夜子の声………っ………もっと聞かせて……」


彼の低い声が届いた

途切れたそこから漏れる吐息に見えない彼の姿を想う

余裕無く眉を潜めて汗を流す淫靡な姿………

今私の目に映っている訳では無いのに更に昂る気持ちは快感を高め


深く深く腰を打ち付けられる度に追い立てられ一際強い快感が全身を走り抜けて目の前が真っ白に成った

ガクガクと震える脚は力が入らず意思とは無関係に揺れる腰

身体を包む浮遊感に頭に霧がかかり意識を手放しそうに成る