ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第55章 小悪魔の誘惑
耳にも煩い鼓動にクラクラと目眩がする
「…………何その顔、誘ってる?」
耳元に寄せられた唇から誘惑的な囁きが吹き込まれて身体は熱を上げた
あの日を思い出す様に肌が震えて動けない
濡れた大きな手が頬を撫で顎を掬い上げ、私は只されるがままに顔を上げた
悠々と近付く端正な顔立ちに印象的な瞳は瞼を閉ざしていて長い睫毛が影を落としていた
キスをするのだと理解して身を委ねた途端に激しく唇を奪われる
無理矢理に押し入った舌は口内深くを犯し息苦しさと驚きで胸板を押し遣るが腰に回された腕に一層力がこめられただけだった
優しい触れるだけのキスだとばかり思っていた私は予想外の出来事に混乱していた
彼が唐突に激しく唇を重ねる事等かつて記憶を遡っても一度だって無かった
腕の力が強まった事で肌が密着する
水着を身に付けてはいてもビキニでは普段の何倍も布面積が少なく水中でしっとりと触れ合う感覚を艶かしく感じた
その間にも貪る様に角度が変わり舌と舌が絡む
満足に呼吸が出来ず息苦しさを訴える様に肩を叩けば糸を引いた唇がゆっくりと離れて啄む様な優しいキスが落とされた
荒い呼吸を繰り返しぐったりと力を無くす私とは対照的にひとつの息も乱さず余裕すら漂わせた彼は妖艶な笑みを浮かべ
「……このまま襲っても良い?」
美しい顔には似合わない淫靡な声色で言った
ゾクゾクと粟立つ肌はこの先を期待していると解る
………………だが………………
「む、無理に決まってるでしょ!!!」
思い切り裏返りながらも私はきっちりと拒否を示していた
私の理性は自分で思っているより強固なものだった
「どうして?」
わざとらしく小首を傾げる仕草が犯罪的にセクシーだがほだされてはならない