第55章 小悪魔の誘惑

「気持ち良いですね！」


「うん。」


事前リサーチにより判明していた混浴との情報に私達は水着を持参した

山中にひっそりと佇む温泉は遠く海を見下ろす絶景に位置し、標高が高い事もあり露出した肌を心地好く風が撫でる


………これは長湯出来るお湯だ


口コミ通り人も居らず貸切状態の温泉にて私達はのびのびと湯を満喫していた


辺りを見渡せば背後には深い森、遠く彼方には海と人の気配の無い温泉はまさに秘境だった

湯船の形状も故意に作られた様な人工物では無く、長い年月温泉が湧き出た事で削られた様な一枚岩で

あの番組で見た温泉にも引けを取らない素敵な雰囲気だ



…………………森にはトラウマがあるが踏み込ま無ければ其れで良い事で繁々と眺めるのを辞めて

私はもっぱら海を眺めていた


キラキラと太陽を反射する真っ青な水面は雄大に見えた


まだ昼過ぎのこの時間

真夏を過ぎた秋を感じるこの時期でも日射しは暑い

長湯は出来ないだろうと諦めていたが要らない危惧だった

大きな枝から木陰が生まれ風が吹く度に揺れる葉の音は心を落ち着かせる


「………極楽ですねぇ」


「うん。」



タダで源泉かけ流し湯、しかも大好きな彼と一緒だなんて贅沢な事この上ない………なんて幸福に浸っていると


チャプチャプと水音がして彼が直ぐ隣にやって来た