第53章 早口のヒトコマ

「…………どうせ言えないですから嫌です………」


「言えなくて良いから。」


「…………？」


「さっき迄は恥ずかし気も無く言ってたじゃん。」


「…………今日の奏者はそしゃじゃじょ……」





訳が解らずに言われるがまま口に出したのだが


「…………。」


彼は私の下手くそな早口言葉を聞き届けると何事も無かった様に再び新聞を開いた


まさか言えと発言しておいて突然終了させられるだなんて誰が思うだろう


「え……？！放置ですかイルミさん！」


新聞を捲る腕を緩く叩けば


「沙夜子は一生早口言葉が出来ない方が良いよ。」


なんて謎の台詞を頂き


その意図を無い頭で考えた結果、早口言葉を言えない私を少なからず可愛いと思ってくれたのでは……………！！！！なんて思い上がってしまった

恐れ多くて真意を確認する事は儘ならないまま


その日以降、極稀に早口言葉を言えと唐突ながら威風堂々と命令する彼に内心自惚れている事は絶対に秘密である