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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第53章 早口のヒトコマ





9月のある日



「………ジャズシャンソン歌手」



「?」



「ジャズシャンソン歌手!ジャズシャンソン歌手!ジャズシャンソン歌手!」



「…………。」


「イルミさん!」


「何。」



「早口言葉得意ですか?」



「さぁ。」



「言ってみて下さい!」



テレビから流れる番組が早口言葉でゲームをしていた

私は全くの不得意だが

彼は何でもスマートにこなしてしまうし早口言葉も得意なんじゃないかと思った

…………と言うのも事実だが無表情に言葉を噛む彼は非常にキュートなんじゃないかと思ったのだ


隣で静かに新聞を読んでいた彼はテレビ画面に視線を向けた


芸能人達が挑戦する早口言葉は"右耳にミニニキビ"


私は喉の調子を整えてから果敢に挑戦を開始する


「右耳にミミミキビ!右耳にミミニキビ!右耳にミミミキビ!」


決して早くない。

どちらかと言われずともスローな速度で噛みまくった私をガン見する大きな瞳にぎこちない笑顔を向ける


「さ、イルミさんも!」


私を鼻で笑って見下した彼は


「下らない。」




なんて一刀両断してしまったが私が食い下がれば溜息を付いた後に


「…………右耳にミニニキビ、右耳にミニニキビ、右耳にミニニキビ」


本当にスムーズに早口言葉を完璧に言って退けた


彼が噛む姿を拝め無いのは少し残念だが私には一生修得出来そうに無い技をサラリとこなす彼に素直に感激してしまう


「凄い凄い!アナウンサーになれますよ!」


「………成らないけどね。」


言いながら再び新聞を開く彼



次いで登場した早口言葉は"買った肩叩き高かった"



「買ったたた叩き高かった!買った肩た叩き高かった!買ったたた叩き高かった!」


中々に難しい…………


私は新聞を読んでいる彼に目掛けてもう一度早口言葉を繰り返した

是非彼のスムーズな早口をもう一度………



「買ったたた「解った、言うから。」


何度目か解らない早口言葉の最中彼は呆れた表情で新聞をテーブルに置いた

何度目か解らないくらい繰り返しても私の早口言葉は上達しなかったという悲しい現実は置いておき

彼が渋々ながら付き合ってくれる姿勢を取ってくれた事に心は満たされていた


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