ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第52章 雄大な自然
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深い眠りから揺り起こしたのは彼の小さな囁きだった
「沙夜子、起きなよ、来た。」
重たい瞼を無理矢理抉じ開け怠い身体を持ち上げる
……………そう言えば私はキャンプに来ていたのだった……………
「早く、通り過ぎる前に見ないと。」
のろのろ動く私を急かしながらテントの隙間から外を覗く彼を何とも元気な人だな、なんて普段は思わない事を思ったりする
僅かに開かれた隙間から薄ぼんやりした光が射し込んでいて朝焼け近い時間帯なのだろう事が解った
彼の急かし様から目的の動物なのだろう
わざわざキャンプまでして私に見せたかった動物とは…………!!!
ドキドキと跳ねる胸には期待と恐怖が混ざり合っていて私は緊張の面持ちのまま外を覗き見た
「……………おぉ…………」
「マウンテンモスラビットだよ、今の時期しかパドキアには生息していない。彼等は常に大陸を移動し続けているんだ。」
ほんの5m程先の森林を通り過ぎて行く動物は彼の説明通りウサギだった
しかし……………なんて大きいんだろう……………
マウンテンの名に相応しい立派な筋骨、鋭い眼光、決して刃物を通さなさそうな毛はご立派としか言い様が無く
ウサギだと言われても可愛いとは一切思わなかった
寧ろ『御勤めご苦労様です!』と挨拶をしてしまいそうな貫禄はウサギもここまで強面に成れるのだと逆に感心してしまう
この山はなんでも大きくないと生きて行け無いのだろうか…………
「肉食獣も奴等を襲わない、敵は群全体でリンチして返り討ちにする。群の強味はそこだから賢い選択だよね。」
「へ、へーイルミさんはいっぱい動物の事知ってるんですね」
「まぁね。沙夜子に見せたかったのはこれ、……兎好きだったよね?」
「………はい、マウンテンラビットかわいー」
「マウンテンモスラビットだよ。」
「かわいー」
彼が余りにも穏やかに瞳を細めて微笑むものだから
私は筋骨隆々の厳ついウサギを懸命に褒め称え続けたのだった
「ちなみに排泄物には毒が含まれているから触っちゃ駄目だよ。」
「へーカッコいいー」