ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第52章 雄大な自然
夕食から三時間程が経っただろうか
炎を消して辺りには暗闇が広がる
見えない闇の中には沢山の気配が満ちていてザワザワと騒ぐ木々や遠くから聞こえる何かの鳴き声に私のチキンハートはすっかり怯え上がっていた
未知の生物は命を危険に晒す恐怖があり、夜の森は暗がりの中誰かが潜んでいる様なホラー要素も満点だ
……………そして私は今彼も知らない死闘を静かに繰り広げている
膀胱が限界だ。
膀胱から脳にこれ以上の籠城は無理だと伝達が来ている
………出物腫れ物所構わず、とはまさにこの事だろう
用を足すにしてもこの自然の中、彼に音を聞かれずにするにはかなり離れる必要がある
………ひとりで暗がりを歩く…………
見渡せば先程よりも不気味に感じる如何にもオバケが出そうな雰囲気を漂わせた森
ランタンを持って行く事も考えたが煌々と照らされていては離れる意味が無い
そして思考を巡らせている今この時も猶予は着々と迫っている
彼に付き添って貰うのが一番心強いが羞恥がそれを断固拒否する
……………もうここで漏らそうか………
(…………あかん。冷静になれ。)
恐怖と羞恥がせめぎ合い判断力が著しく低下していた
漏らすなんて一番の大惨事だ
そんな情けない姿を彼に見られた暁には私はこの森の中に姿をくらませるだろう…………
…………そうだ、漏らすよりずっと良い
(………沙夜子=ゾルディック26歳……いざ行かんッ!!!!!)
私は怯え上がったチキンなハートに渇を入れて事実を捏造しながら立ち上がった
私はやる時はやる女だ
「イルミさん、私ちょっとトイレ行ってきます」
「テントの裏でしな。あまり離れると俺の念から出ちゃうから。」
テントの裏………盲点だった
音は多分ギリギリ聞こえないし視覚も遮れる
…………もっと早く彼に言えば良かった
なんて思いながらもテント裏に回り込み用を足していたその時だった
慣れない環境とはいえ限界に差し迫っていた為に特段気にならず、彼が念で辺りを警戒してくれているのだと知り私は俄然強気に成っていたのだ
『あははははははははははは』
背後から男性の笑い声がすると気が付く迄は