ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第51章 動物園へ行き…………ましょう……?
絶望と圧倒的な恐怖を前に戦意すらも手放した私が見たのは
只静かに敵を見据える彼の淡白な横顔だった
けたたましく不気味な羽音が直ぐ目前に迫り着地を仄めかす腹を向けた体勢の敵を前に私の脳内を走馬灯が駆け巡る
……………終わった…………
何故そんなにも気持ちが悪いのだと正座でもさせてやりたい六本の脚を前に私は赤子より無力だった
(………………イルミ隊長、沙夜子五等兵は此所で戦死します……………屍を越えて行け……………)
グチャッ
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!!!!」
目の前で彼の腕がコオロギの身体を貫通し、飛び散った体液が頬に掛かった
私は形振り構わずに頬肉が削ぎ落ちそうな勢いで擦り拭きながら彼のTシャツをこれでもかと引っ張り跳ね回る
びくびくと痙攣する六本脚と腹の模様
………恐ろしく気持ちが悪いッ!!!!!!!!!!!!!!
大体膝くらいの大きさがありそうなコオロギなんて気持ち悪い以外何者でも無く
鳥肌が総立ちを通り越して私自身が鳥肌の化身と化しているだろう
未だ腕に死骸をぶら下げたまま
「ほら、心臓まだ動いてるから見てごらん」
なんてその手に持った臓物を差し出す彼の神経のおかしさに私は灰になりそうだった
「このサイズだと昆虫にも人と変わらない臓器が存在する」
なんて得意気に話した彼は腕を一振りして死骸や滴っていた体液を平然と吹き飛ばした
…………………私の人生において嘗て無い無駄知識は強いトラウマとなり、例え記憶喪失に成っても消えてはくれないだろう…………
「あのコオロギは人体に卵を産み付けるヤドカリコオロギって言って「聞きたくありません。」
「………そう。」