ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第51章 動物園へ行き…………ましょう……?
静かに走り出した車
相変わらず彼の運転は細心の注意が払われていて乗り物に弱い私への配慮に優しさを感じる
「私この世界の動物あんまり知らんから凄い嬉しいです!」
「良かった。」
「似てるけど全然違いますもんね!」
「そうだね。」
なんて穏やかな会話を弾ませていると山間に差し掛かった所で突然車は路肩に寄って停車した
「?」
「乗り換えるから降りて」
「………????」
何も無い大自然の真ん中
車通りも僅かな只の道端で車を乗り換えるとは一体……?
言われるがままに車を降りて突っ立ってしまった私だが、疑問符で一杯の頭を捻る
彼の職業柄、今迄優雅に乗っていた車は盗難車なのかも知れないと考えた
盗難車ならば其れで動物園迄向かってしまうのは危うい上に呑気過ぎる気がした
……………盗難なんて私には良く解らないが乗ってしまっていたのだから私も同罪だろう………心の中で謝罪しながらも
何故か茂みの中へ消えた彼の姿に不安を覚える
呼び掛ければ返答はあるのでその場で待っていると力強く茂った草むらから唐突にエンジン音が聞こえて私は後退ってしまった
………何故草むらから………
………いや……しかし………先程考えた盗難車という説が真実ならば此所で事前に隠していた彼の本来の愛車へ乗り換えるのかもしれない
現に"乗り換える"と彼は言っていた訳だし………
思いもよらない場所からのエンジン音に多少驚いてしまったが名を呼ばれて恐る恐る茂みへ踏み入ると目の前に現れたのはまさかのジープだった
「!?」
「さ、乗って」
単調ながら急かす様に乗り込む彼の姿に慌てて助手席に乗り込んだが
てっきり彼の愛車があるとばかり思っていた私にとって予想外な車種だった事に困惑してしまっていた
まさかとは思うが彼の愛車なんて事は……………いや、無いだろう………
彼の自室の写真を思い出した
モノクロでシンプルな無駄の無い部屋に住む彼がプライベートで乗る車にジープを選ぶとはとても思えない
もやもやと広がる疑問と違和感………
私が違和感を抱く時は大体何かしらのズレが生じている事が多い様に思う
………動物園へ行くのにジープ…………
悪目立ちも良い所だ………。