ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第50章 話し合う
「………イルミさんは……」
彼は私と違って賢い人だ
別れを見据えた上で今を生きているのかもしれない
次元を越えて世界を行き来するなんて非効率的な方法を繰り返すつもりは無いのかもしれない
彼は私の世界では生きて行けない、家を見捨てる事は出来ないと以前にはっきりと発言していた
彼にとって私より大切な事………
…………だから彼は一年待っても戻って来てはくれなかったのだと考えれば全ての辻褄が合う様に感じた
途端に込み上げる涙を必死に堪えて短い息を吐く
「………イルミさんは……私と………」
私が勝手に押し掛けた
彼を責める事は出来ないけれど其れならば一線を越えたくは無かった
以前とは比べ物にならない程彼の温もりや気持ちを知った今
隠されていた顔を少しずつ知る今を経て私は独りに耐えられるだろうか
「………別れる事、平気なんですか」
静かに私の声を聞いていた彼は大きな溜息を付いた
「……私は怖いです……私はイルミさんに会いたくて………こっちに来て………」
チラリと彼を盗み見れば呆れ顔が映る
……………そんな事に今更気付いたのかと呆れられてしまっただろうか
私と彼は深く通じ合っていた……なんて酷い思い上がりだ
舞い上がっていた私の姿はさぞ滑稽だろう
「沙夜子は本当に馬鹿だね。」
「…………。」
「俺だって考え無い訳じゃない、沙夜子が居なくなって平気な訳ないでしょ。」
「え……」
おずおずと見上げた先彼は柔らかく微笑んだ