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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第50章 話し合う







出来上がった料理を置くテーブルが無く私達は小さなキッチンカウンターで並んで食事をしている


彼の所作ひとつひとつに気配が感じられず元々静かな人だが此所まで音を経て無い事は記憶を振り返っても無い

今の彼は隣に座っている筈なのに視界に入れていないと何処にいるのかすら解らなくなる



テレビも付いていない静かな部屋に私一人分の食器音だけが鳴る中食事は終了した


何時もなら"美味しい"と言ってくれるのに張り切った分だけ虚しさが込み上げた


気まずさを隠せない私とは裏腹に落ち着き払って見える彼をチラリと盗み見つつも洗い物を済ませて紅茶とコーヒーを入れる


リビングを振り返れば滅茶苦茶に成った家具


どうするべきなのか困惑していた先程よりも随分と気持ちが落ち着いた今、彼の行動に全く触れないのもどうかと思い始めた

もしかしたらあからさまなあの行動は私から話しを振ってくれという激し過ぎる自己主張なのかもしれない………

何せ彼は極度に人と接触せず素をさらけ出して深い付き合いをするなんて事は今まで皆無だったのでは無いだろうか

随分女性慣れしていそうでいて初めての彼女は私なのだし
友人も必要無いと言い張る彼は絡まった気持ちを巧く伝える術を持ち合わせていない様に思う

歪んだ愛情のぶつけ方だって随分不器用だ




マグカップの取手をぎゅっと握り締めてゴクリと唾を飲み込んだ


未だキッチンカウンターから動かない彼の背中に視線を向ける


「………あの、何かありましたか………?」


やけに響いた私の声に彼はゆっくりと振り返った


「……………。」


コクリと頷き直ぐに逸らされた視線


「………すみません、ヒソカさんの事……ですよね………?」


「…………うん。」


感情の読めない横顔を只見詰める


私は不機嫌が故に家具に八つ当たりをしたのだと思っていた

しかし目の前の彼は怒りと言うよりは思い悩んでいる様に見えた



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