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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第1章 彼が消えた日





私の力等彼にとって無に等しく私を無視して進む事なんて造作も無く出来た筈だ


なのに彼は振り払ったりせず、すがり付く私に足を止めた


いつの時でも彼は私に付き合ってくれる優しい人だ






なんて思えば枯れる事の無い涙はまた溢れて放り投げたクッションをまた抱き締める





あの時の私はその優しさに気が付いて彼との沢山の思い出が頭を巡っていた

霞む視界で彼の背中を見詰めながら

約一年彼と過ごした日々が走馬灯の様に駆け抜けて

大好きで温かな日常が崩れて行くのを感じた


遂に身体中の力が抜けて立っていられなくなった私は自分でも思いがけない言葉を口から溢らした



「……………好きです」



一人呟いてみる


暗い部屋の何処にも行かずに消える言葉








あの日私は彼を振り向かせる事に必死だった

出会った頃から私達の前には絶対的な別れが存在した

しかしそんな中でも積み重ねた日常、交わした会話、作った思い出は数え切れず

その中には確かに感じた彼の心、私達の絆があった


こんなにもあっさりと彼は帰ってしまうのかと何時もの調子で放たれた言葉に寂しさは込み上げ

気が付けば胸にずっと秘めていた想いを口にしていた


それが彼にどんな影響を与えるかなんて解らない

意味があったのかも解らない





只もっと彼にも別れを惜しんで欲しかったなんて独りよがりな我が儘に自傷染みた笑みが漏れる





一度溢れた想いは止めどなく、私は何度も彼に同じ言葉を叫んだ


行かないで欲しい此所にずっと一緒に傍にいて欲しい………それが叶わないのなら


愛しい彼の存在しない世界に生き続けなければならないならば


いっそのこと私を連れて行ってやくれないだろうか

なんてすがり付く程に只彼を求める心


彼は私の言葉に振り返った


『………好きなんです………!!』


真っ直ぐに見上げた彼にやっと真っ直ぐ届いた想い

彼は少し困った様な顔をした



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