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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第47章 親方と私達






平凡に生きてきた私にとって無傷では済まないビルから飛び降りる人を目撃するという体験は衝撃的で

其れが愛しい人だからこそ彼を失う恐怖が思考を支配した


嫌に荒い呼吸を繰り返しながら鉄柵を覗き込もうとしたその時

重力を無視した様に舞い戻って来た彼の姿に恐れ戦き私は脱兎の如くスピードで思い切り室内へ逃げた


「きゃあああああああああッ!!!!!」


重症に違い無いと思っていた彼のアクロバティックな帰還に悲鳴を上げた私だが彼は無表情で見下ろすと


「地面に死骸は無かった。」


なんて言いながらベランダを後ろ手で閉じた


バクバクと煩い心臓を抑えながら無傷の彼を見上げて
その時初めて彼の身体能力を思い出した私は

彼の無事に安堵したと同時に"死骸"という言葉に泣いてしまいたくなった



死骸は無かった。


ならばまだ部屋の何処かに親方はいる筈だが私の不注意で身を危険に晒してしまった事を激しく後悔していた


「ハムスターが行きそうな場所………」


取り乱す私とは相反して普段と変わらず冷静な彼はスマホでハムスターが隠れそうな場所を検索している様だった


………………私がこんな事では駄目だ


私が親方を家族に迎えたのだから冷静に確実に見付け出さなければ………


チェストの下をスマホで照らしながら呼び掛ける

そんな中彼から聞こえた



「空に逃げる…………か。」


という意味不明にも程がある台詞に思わず聞き返す



……………空………………?


……………彼は空と言ったのか………?




「ハムスターには羽根があるからね………屋根から捜索する。小さな羽根だし長距離移動は困難な筈だ。」



真剣な眼差しを向ける彼を真っ直ぐ見詰める




確かにこの世界のハムスターには羽根が生えていた

しかし親方に羽根等生えていない


そしてその時私は冷静に見える彼も焦っているのだと気付いた


…………ポーカーフェイスで全く解らないが



今にもベランダから出て行きそうな彼の背中に叫ぶ


「……親方に羽根は生えてません!」


やけに室内に響いた私の声に彼は立ち止まると


「…………うん。確かにね……確かに生えて無い。」



無表情に踵を返しスマホの情報は宛てに成らないとばかりにソファーへ放った



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