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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第36章 水風船のヒトコマ







そして私は知っている


正気に戻っては負けなのだ


床に投げつけるに飽きたらず触って見ればツルツルだった大きな扉にも投げて見る

床に比べて思い切り投げる感覚はドキドキと楽しい気分に成った



部屋の中で何をしたって構わないと彼は話した

とにかく外に出なければそれで良いと

後に自身の存在はゾルディックに内密なのだと知り彼が私を部屋に閉じ込めたい理由には其れも交ざっているのかと思った

一人で外出するのは危険……しかも暗殺一家の情報網があれば、うろうろ一人私が出歩けば直ぐに見付かってしまうのかも知れないと思う

彼と一緒に外出するのは一番不味い気がするが彼には何か考えがあるのだろう



なんて考えながら次々扉に向かって投げていると突然扉が開き


バシャン


部屋を覗き見た麗しき彼の顔で水風船は弾けた



「!!!!!」


「…………何してるの。」


眉を潜めて怪訝な表情を浮かべた彼に駆け寄ろうとすれば水浸しの大理石に滑って転ぶ


「っ………お帰りなさい」


あまりの痛さに踞ったまま言った私にいつの間にか音も無く近くに立った彼は


「馬鹿じゃないの。」


単調な言葉を落とした



「あ、さっきすみません……」


その場に座り見上げれば顔から滴る雫が白いシャツの胸元を濡らし水を含んだ前髪を鬱陶しそうにかき上げる彼と目が合った


「完全に油断してた。」


濡れたシャツは所々張り付いて彼の鍛え上げられた肉体の輪郭を型取っていて何とも色っぽい姿にドキドキしてしまう




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