ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第35章 毒
勿論その時は無我夢中で彼の回復を待っていたし邪な感情等微塵も無かった
しかし彼が復活した今思い返した表情はどこか悩ましく愛欲的な事を連想してしまったのだ
私の脳はつくづく馬鹿だと思う。
苦しんでいた彼を思い浮かべてドキドキしてしまうなんて最低だ
…………だけどいつも余裕な彼が余裕無く息を荒げて漏れる小さな声は妖艶な物の様に思えて
細められた瞳はセクシーで色香を漂わせ汗こそかいていなかったが初めて見る表情は酷く色っぽい姿だった
………………苦しんでいたのだからそんな事は口が裂けても言えないが…………
「沙夜子」
「………はい!」
良からぬ事を考えていた私の耳元に吐息交じりの囁きが落ちて肩が跳ねる
気が付けば随分至近距離で私をじっと見ていた彼
「真っ赤だけど、どうしたの?」
言いながら私の頬に手の甲を滑らせる彼に先程の思考も相まって心臓は速度を上げて音を鳴らす
「………いや、あの、なんでも………」
「………ふーん?」
「……………。」
未だ至近距離で私を射抜く彼の視線に俯く
ソファーに置かれた彼の手が体重移動を知らせる様にギュっと音を経てた
「俺が毒にやられてるって時に沙夜子はそんな事考えてたんだね。」
「え"……………!」
「声に出てたよ?」
「え………わ、わ、私何て………」
悪戯な笑みを湛えた彼は一瞬にして瞳に妖艶な色を滲ませた
「"あの顔はセクシー過ぎる"って」
「…………!!!!!」
「昨日の事とは言ってなかったけど図星だったみたいだね。」
耳に触れそうな距離で囁く声に肩が跳ねて俯くが
逃がさないとばかりに覗き込まれて息が詰まる
「………だって………その…………」
私は今まで彼に触れられあられも無い声を漏らした事がある
しかし考えて見れば彼に触れて彼が息を乱す事等皆無だった
淡白な彼もしっかり男性なのだと認識しているし
彼自身の赤裸々な告白で性欲を持ち合わせている事も知った
只、彼がそういう事をした時にどんな男性の顔を見せるのか私は知らないのだ
「…………いや、あの………イルミさんっていっつも無表情やしそういう………時も無表情なんかな………とか…………」