ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第35章 毒
彼が漸く正常な呼吸に戻ったのは夜が明けた頃
そのまま眠ってしまった彼を起こす事は出来なくてベッドからシーツを引っ張って来て彼に被せた
朝日に照らされて輝く髪に触れる
溢れては止めどない想い
彼は私に完全に気を抜いているのだと以前に増して実感した
まともに力の入らない身体ではいつ命を奪われてもおかしくない
勿論私がそんな事をするだなんて思わないだろうし実際そんな事はしない
だけどプライド高く警戒心の強い彼が私には弱った姿を見せてくれたのだ
そしてその理由が「早く帰らなきゃと思った」という優しい理由だった事
私は彼の特別なんだと感じると共に愛しさが胸に溢れた
繰り返される静かな呼吸に安堵の涙を流せば彼の大きな手の甲にポタリポタリと弾けた
すっかり熟睡する彼の寝顔は穏やかで一切の苦痛が無い事を知らせていた
…………苦しい時間は過ぎたのだ………
「お疲れ様でしたイルミさん……お帰りなさい」
私の呟きは朝日に溶けて眠る彼の傍で私も瞼を閉じた