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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第35章 毒






私は只の一般人だ


医療知識も無ければ都合の良い治癒能力も無い

苦しむ彼の傍で只手を握る事しか出来ない


この街の何処かで今日も人が死んだ


彼に仕事があるという事はそういう事で、彼が其れだけ身を危険に晒すという事

格段に死のリスクが付きまとうと言う事…………


只名を呼ぶ私に彼は「平気だよ」と言った





平気とは一体何なのか




血を吐き出し苦しんでいて一体何が平気なのだろう

…………彼の言う平気は命の別状に関しての事


勿論彼の命に別状が無いというのは安堵する事実だが

彼は身を削って迄仕事をこなす

ゾルディックの為という事に強く固執する彼はその内家に殺されてしまうのでは無いかと思ってしまう


歪んでいて酷く狂気染みていても彼には愛情が存在する
生真面目で勤勉な態度はゾルディックへの忠誠を思わせ
私は良く知らないが兄弟の中で誰よりも家の為に働く彼が一番に盾に成ってしまいそうで怖くなった


彼の呼吸だけが広い部屋に響く中私は背中を擦り痛々しく吐き出される血を拭い続けた





「イルミさん………私の事置いていかんといてくださいね………」


独りポツリと呟いた言葉に


「………勝手に瀕死にしないでよ」


彼は悲痛の表情に口元だけで笑った





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